前回は痛み止めの使い分けについて解説しました。

この中で、麻薬については「うまくオピオイドを使えれば痛みから解放された生活が送れます」と綴りましたので
今回はそれぞれのオピオイドの使い分けについて解説したいと思います。

手始めから最後までいけるオピオイド
オキシコドン(オキシコンチン、オキノーム、オキファスト)
数あるオピオイドの中でもファーストチョイスになりやすいオキシコドン
理由は少量から使えて、モルヒネではない、という点です。
導入時にモルヒネというと抵抗感を示す患者さんがオキシコドンだとその抵抗感が和らぎます。
トラマドール100mg日でも効果が十分ではない時、オキシコンチン10mgを朝晩に1錠ずつ飲むと楽になることが多いです。
また今後痛みが強くなりそうな時は、トラマドール使う前に最初から5mgを朝晩1錠ずつ飲む使い方もできます。
そして20mg錠も30mg錠も40mg錠もあるので、小刻みに増やせます。
オキノームというすぐ効く(15分程度)形態の薬もあります。
最終的に内服が難しくなって注射にするときもオキファストという注射薬があるのでトラブルがなければ最後まで使えます。

呼吸困難や大量投与を得意とするオピオイド
モルヒネ(MSツワイスロン、オプソ、アンペック)
なんといっても医療用麻薬として有名なモルヒネですが段々と活躍の場は狭くなっています。
効果はオキシコドンとほぼ同じなので、今ではオキシコドンが多く使われます。
呼吸困難に対しても、オキシコドンも同等の効果が得られるのでは?という報告が上がってきていて
モルヒネの独壇場であった呼吸困難の患者さんにもオキシコドンが使われることも多くなってきました。
それでも最もエビデンスの質が高く示されているのはモルヒネなので
特に酸素化が良いのに呼吸数の多い場合はモルヒネが最も使われます。
(酸素が体に回っていない場合は、呼吸困難感をとる前に、苦痛をとるのが最優先で、どのオピオイドでも構いません。)
また高濃度製剤のアンペック注があるため、少量投与しかできない持続皮下注でも高容量のオピオイドを投与可能です。

飲めなくても、腎臓が悪くても使えるオピオイド
フェンタニル(フェントステープ、アブストラル、イーフェンバッカル)
鎮痛薬の欠点の一つが飲めなければ注射という点がありますが、注射は行動が制限されてしまいます。
特に消化器系の癌の方は内服が難しいことがありますので、フェンタニルはそうした方によく使われます。
フェントステープという1日1回体のどこかに貼れば良いという、かなり簡単な方法で投与可能です。
以前は「最初からテープだと、効きすぎた時に自分で剥がせなくて危険」と言われていましたが
今は0.5mg製剤もあるので、そのような心配はかなり減りました。
また肝臓で代謝されるため、腎機能障害の時にはファーストチョイスになるオピオイドです。
また面白いのが、アブストラルやイーフェンバッカルの舌下錠や頬粘膜吸収剤は飲まないで良いレスキューです。
そして効き目もオキシコドンのレスキューより早く、大体10分程度で効き出します。

上記基本の3つ以外のマイナーなオピオイドの使い分け
びりびりとした痛みに・・・タペンタドール(タペンタ)
咳が苦痛になっている時に・・・ヒドロモルフォン(ナルサス・ナルラピド・ナルベイン)
アンペック座薬に出荷調整がかかったら・・・ブプレノルフィン(ブプレノルフィン座薬)

最後の切り札となるオピオイド
メサドン(メサペイン)
副作用としてQT延長症候群という心臓異常があるため、処方が免許性(当院は処方可能です)になっているオピオイド。
定期的に心電図をとることが必要ですが、痛みを取る力は全てのオピオイドに勝ります。
日本ではメサドンの注射薬が使えないのが残念なところです。
内服できなくなったら、オキシコドンやフェンタニルに戻す必要があるので
今までのオピオイドの内服に少しだけメサペインを加えるという方法も有効です。

こうした麻薬を使い分けることで、痛みから解放される患者さんが増えることを祈っています。