がんの方にとって痛み止めに使う薬は大事です。
日本人の方は痛みを我慢する傾向があり、人生の質を損なっていることが多いです。
とくに医療用麻薬を使うことに抵抗のある方が結構いらっしゃるので
・痛い時は使う
ことを念頭に、以下のようなものがあることを知って、うまく痛みと付き合っていただければと思います。
鎮痛薬は多岐にわたり、使える薬も多くあるので、まずはそういった種類の薬があるのだ

1.そこそこ痛い時
カロナール(アセトアミノフェン)
効果はそこそこですが最もよく使います。
何より副作用が少ないために使いやすく、用量を大きくするとそれなりに効果があります。
1回1000mgで6時間ごとに服用します

2.カロナールでは抑えきれないくらいの痛さの時
トラマドール(トラマール、トラムセット、トアラセット、ワントラム)
ある程度の慢性疼痛はこのトラマドールで抑えられます。
ただ、少しだけ副作用も出てくるので、特に初期は吐き気どめと一緒に開始したりします。
1のカロナールと合わせて鎮痛効果を高めたトラムセットや、一回飲めば一日中効くワントラムなど
製剤の種類が多くあり便利です。

3.トラマドールでは抑えきれないくらいの痛さの時
麻薬:オピオイド(オキシコドン、フェンタニル、モルヒネ、タベンタドール、ヒドロモルフォン、メサドン)
がん患者さんや心不全の患者さんはよく使用するものになります。
疼痛に対して少量から大量にも使うことができるので、かなり便利です。
また服用後すぐに効果がでるもの(レスキュー)から、1日中効いてくれるものまで揃っており
個々の生活に合わせた形で使用することができます。
ただやはりネックなのは副作用でも最も多いのは便秘、悪心嘔吐、眠気です。
これらの副作用を抑えながらうまくオピオイドを使えれば痛みから解放された生活が送れます。
個々のオピオイドの解説は次回行います。

4.ビリビリとした痛みに
プレガバリン(リリカ)、ミロガバリン(タリージェ)
神経障害性疼痛(びりびりとした痛み)には神経興奮を抑える上記2種を用います。
重篤な副作用がなく使いやすい薬の一つですが、眠気やふらつきを誘発することがあるのがネックです。
逆にその眠気を利用して、痛みで夜眠れない方にリリカを使うという方法もあります。
その痛み緩和効果と眠気でぐっすり眠れる方をしばしばみます。
リリカで眠気が強い方にはタリージェに変更することでうまくいくこともあります。
使いやすい薬ですが特異的な副作用の一つに浮腫・失神があり、これが出現する場合は中止にします。

5.抗がん剤後のビリビリに
デュロキセチン(サインバルタ)
このサインバルタという薬は面白い薬で、
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)として知られる抗うつ薬ですが
神経障害性疼痛にも有効であることがわかって頻用されるようになりました。
特に抗がん剤(中でもプラチナ製剤)の神経障害性疼痛に有効ともされ、
重篤な副作用も少なく試してみるということが可能な薬です。
またリリカでは眠気が出てしまうという方にサインバルタを使うということもよくします。

ここで紹介した鎮痛薬はごく一部ですが、多くの患者さんの助けになるものだと思います。
もし、痛みに我慢していたけど、この薬なら使ってみたいというものがありましたら是非主治医にご相談ください。