在宅医療を利用している患者さんはよく便秘の薬を使っています。
ただ、うまく使えず便秘に悩んでいる方も多く見かけますので
以下の薬の使い分けを参考に主治医と相談してください。

日本でも圧倒的な使用率、でも実は注意が必要

酸化マグネシウム(マグミット)
日本で最も使われてるといっても過言ではない薬。
浸透圧性下剤の一つで、腸管壁から水分を奪い、便を柔らかくする。
腎機能低下している高齢者では高マグネシウム血症になり心機能異常をきたすので増やしすぎは注意
また吸着作用・制酸作用があるので、抗菌薬の効果を落とすことがある。

世界の標準薬、小児でも、高齢者でも安心

マクロゴール4000(モビコール)
酸化マグネシウムと同様の浸透圧性下剤の一つ。
マグミットは塩類下剤である一方、モビコールは糖類下剤で、高マグネシウム血症の心配はない。
ただし、こちらは100ml程度の水に溶解して飲む必要があり、やや面倒。
こちらも量の調節が感覚的に容易で、腎機能低下した患者さんでも大丈夫

普段の食物繊維に近い成分

ラクツロース(ラグノスNF経口ゼリー、モニラック)
食物中に含まれている、人の消化酵素で消化することのできない物質を食物繊維と言うが
このラクツロースもヒトは分解できす、大腸内の腸内細菌によって、有機酸(乳酸・酢酸・酪酸)に代謝される。
酸性された有機酸によりpHが下がり、アンモニア産生菌を抑えるために高アンモニア血症にも用いられる。
透析患者にも安心して投与できるところは便利。

若年女性でなければ、推奨したい薬

ルビプロストン(アミティーザ)
日本では2012年に承認された新薬だが、欧米ではもっと歴史があり安全性の高い下剤。
上皮機能変容薬に分類され、小腸からの水分分泌を促す他、腸管バリア修復作用なども注目されている。
胎児に悪影響の可能性が高いため妊娠している女性は使用してはいけない。
また若い女性は悪心の副作用も多い報告があり、避ける方が無難

患者さんが「赤い薬」と言い出した時は大体これ

センノシド(プルゼニド)
刺激性下剤の一つで、寝る前に1錠or2錠を飲む薬。
センノシドは腸内細菌によってレインアンスロンに変化し
大腸のアウエルバッハ神経叢を刺激し、大腸の運動を促進する。
耐性を生じるので、長期連用はしないほうが良い。

漢方薬好きな高齢者にはまずはコレ

麻子仁丸(ましにんがん)
高齢者にマイルドに効いてくれるので使いやすい薬。
成分の大黄はセンノシドを含んではいるものの、連用しても他の作用の効果もあり耐性は生じないとされている。
レインアンスロンの効果のほか、消化管上皮から水分を引き寄せて軟便化させる。
他の漢方薬との飲み合わせには注意する。

がん患者さんには覚えて欲しい薬

ナルメテジントシル塩酸塩(スインプロイク)
医療用麻薬のメジャーな副作用の一つが便秘であるが、その解決策となってくれる薬。
末梢性オピオイド受容体拮抗薬で、麻薬の鎮痛効果は邪魔しないが
脳腫瘍や脳転移の患者さんは麻薬の鎮痛効果を抑えてしまうことがあるので注意(血液脳関門を通過してしまう)
本来は麻薬の開始と同時に飲むほうが副作用が少ないとされるが、薬価が高い(一粒277円)のが難点。

第2、第3の下剤の選択肢として

エロビキシバット(グーフィス)
慢性便秘の患者さんは1剤だけではコントロールできないこともしばしばある。
その時の選択肢になるのが、胆汁酸トランスポーター阻害剤のこれ。
回腸末端の胆汁酸の再吸収に関わるトランスポーターを阻害し、
大腸へ到達する胆汁酸を増加させ、水分分泌と蠕動の促進を促す
他の薬とは違うメカニズムから、効果を示してくれることが期待されるが
副作用の一つに初期の腹痛があり、初めからは投与しづらい。

最後にはこれでなんとかなることが多い

ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)
ジフェノール系の刺激性下剤で
大腸細菌叢の働きにより、活性型のジフェノール体となり
水分吸収阻害や蠕動運動を促進する。
滴下で量の調整可能である点も利便性が高い。

消化管全体を動かしたいときに

モサプリドクエン酸塩水和物(ガスモチン)
便秘症に対して適応があるわけではないが
消化管全体を動かしたいときに使う薬。
慢性胃炎に伴う消化器症状(胸焼けなど)に適応がある。

肛門から直で入れる

ビサコジル(テレミンソフト)
坐剤で肛門からいれるタイプのもの。
直接入れて即効性があるために、効果を実感しやすい。
大腸の運動を促進させることと、水分の吸収阻害がある

物理的に滑らかにする

グリセリン浣腸液
出てこないのなら、逆に入れるという逆転の発想。
便秘で苦しんでいるはずなのに、相応の容量(30~120ml)を肛門から入れることに抵抗はあるものの
注入することで、滑りがよくなり、直腸の運動も亢進するために
排便効果は高い。ただ、注入する分、面倒ではある。

如何でしたでしょうか。こうした薬の手助けを得ながら、機嫌良く人生を過ごせたらよいですね。
画像引用:医療総合サイトQLife(キューライフ)https://www.qlife.jp/