帯状疱疹は50歳以上からリスクが高まり、80歳までに3人に1人が発症するとされています。
年齢が高くなり免疫が弱くなってくると脊髄の神経に潜んだ水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化します。
そのため神経に沿った発疹(ぶつぶつ)ができてしまいます。これがとても痛いです。
治療としてはお薬(バラシクロビル・ファムシクロビル)の内服です。
疼痛や皮疹などの症状が出現してから1日3回72時間以内に飲むことが大事です
治療の開始が遅れると、重症化につながったり、あとに述べる帯状疱疹後神経痛が発生しやすくなります。
皮疹が出現している間は感染力は弱いながらも、空気感染もありますので、皮疹をガーゼや布で覆うようにしてください。
特にがん患者さんが多くいる施設や、体が弱っている人が多い施設は感染させてしまうので気をつけてください。
帯状疱疹の厄介な点は、帯状疱疹自体の激痛だけでなく、そのあとに続く帯状疱疹後神経痛です。
「帯状疱疹の皮疹消失後にも1カ月以上その部位に持続する疼痛」と定義されるもので
この後遺症を合併する確率は罹患者の3~20%、60歳以上では一説では40%に上るとされます。
これが生活のQOLをぐっと下げてしまい、有効な治療法もありません。
これを防ぐワクチンは2種類あります。生ワクチンのビケンと不活化ワクチンのシングリックスです
生ワクチン (ビケン) | 不活化ワクチン(シングリックス) | |
発症予防 | 51.3%(*1) | 97.2%(*2) |
帯状疱疹後神経痛 | 66.5%減(*1) | 88.8%減(*3) |
接種回数 | 1回 | 2回(初回から2ヶ月〜6ヶ月に2回目) |
価格(相場) | 7000円〜9000円(税込) | 2回で40000~44000円(税込) |
*2 Efficacy of an Adjuvanted Herpes Zoster Subunit Vaccine in Older Adults Himal Lal, N Engl J Med 2015; 372:2087-2096
*3 Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older Anthony L. N Engl J Med 2016; 375:1019-1032
上記のように効果の面では明らかにシングリックスの方が良いので、当院ではシングリックスを常備しています。
シングリックスは不活化ワクチンでがん患者さんなど免疫が弱くなっている方にも使えるのが利点でもあります
(生ワクチンはわずかながら感染のリスクがあります)
ネックなのは2回であることと価格が高いことです。
市町村によっては半額の補助があったりするのですが、福岡市にはありません。
「高くて打てない・・・」という声もあったので、多くの方に打って欲しいので可能な限り抑えました。
シングリックス 税込み 1万8000円/回(2回で3万6000円)
福岡市が助成を開始するまでこの価格で提供します。
この価格でも十分高いと思いますが、
ずっと帯状疱疹後疼痛に悩まされているかたや
がん患者さんで治療中に発症して、2重に苦しそうにされているのを見ると
ワクチンを打って体と人生を守って欲しいと切に願います。
参考文献
Herpes Zoster Kenneth Schmader 1 Med 2018 Aug 7;169(3):ITC19-ITC31.1
日本皮膚科学会HP ヘルペスと帯状疱疹
厚生労働省 50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防に対する一変承認時評価資料等の概要
シングリックス添付文書
ビケン添付文書